Deep dive 03
月次経営レポートメーカー

レセコンは数字を出せる。
でも言葉は出せない。
そこを自動にしました。

毎月のレセコンから出したCSVを読み込ませるだけ。担当者別の順位、前月比、名義のチェックまで自動で集計し、スタッフに伝えるコメントの下書きまで書き上がります。院長が読む用の詳細レポートは、それとは別に生成されます。数字は医院の外に出しません。

毎月の実運用で稼働中 院長専用 レセコンCSV / 集計表の写真 データは院内のみ
夜の院長室。デスクのタブレットにグラフが光り、印刷した集計表と冷めたコーヒーが置かれている(イメージ)
毎月ここで止まっていました。集計はできる。でも「これをどう伝えるか」で夜が終わる。image: AI (gpt-image-2)
The bottleneck

時間がかかっていたのは、
集計ではありませんでした。

毎月の流れを思い出してください。レセコンから数字を出す。Excelに貼る。担当者別に並べる。前月と比べる。ここまでは、面倒でも手が動けば終わります。本当に止まるのは、その次です。

「で、これをスタッフにどう伝えるか」

数字をそのまま貼っても、伝わりません。むしろ「詰められている」と受け取られます。かといって、どこを褒めるべきかを探すには数字を全部見比べる必要があり、それには時間がかかる。結果として、月次の共有は後回しになり、やがて出さなくなる。当院もそうでした。

夜の院長室。数字を前に手が止まる、あの時間が問題でした。motion: AI video (H3, 院内GPU)
グラフを出すのは、
普通のソフトでもできます。
意味を読んで、言葉にするのがAIの仕事です。
How it runs

やることは、ファイルを渡すだけ。

渡すもの AIが読む(院内で完結) 出てくるもの レセコンの集計データ CSVでも、印刷物の写真でも 数字の意味を読む ・担当者別の順位と前月比 ・名義チェックと入力漏れ検出 ・褒めるべき変化を探す 経営の数字はネットに出さない スタッフ共有用 褒めコメントの下書きつき 院長専用の詳細版 判断のための機微な数字
レポートができるまで — diagram: AI (Claude)
1
レセコンからCSVを出して、読み込ませる集計表を印刷したものを写真で撮って渡すこともできます。「データの形を整える」作業は要りません。
2
集計と点検が自動で走る担当者別の順位、前月比、自費の集計、そして院長専用処置の名義チェック(本来院長名義になるべき処置が別名義になっていないか)。さらに人数の前月比から入力漏れも検出します。数字の異常に、人が気づく前に気づく形です。
3
2種類のレポートが出てくるひとつはスタッフに共有するための内容と、そこに添える褒めベースのコメント下書き。もうひとつは院長だけが読む詳細レポート——機微な数字や、まだスタッフに言うべきでない話も含んだ、判断のためのものです。
4
院長が読んで、直して、出すここは自動にしていません。言葉の最終責任は人間が持つという線引きです。直した言い回しは辞書に覚えさせるので、翌月からは私の言葉に近づいていきます。
MONTHLY REPORT — 出力イメージ
1位
担当者別ランキング
過去最高
確定した事実として検出
3件
名義チェックの指摘
0件
入力漏れの疑い
▸ スタッフ共有用コメントの下書き(院長口調)

先月はメンテナンスの担当が全体でよく回りました。◯◯さんは自分の担当分だけでなく、急に空いた枠を拾ってくれた回数が一番多かったです。数字が出やすいところではないので、ここは見ています。
あと、来院間隔が延びていた方への声かけが増えたのも先月からですね。効果はこれから出るところなので、続けてください。

※ 上は構成を示すためのイメージです。実際の医院の数値ではありません。

The hard part

AIに、数字を間違えさせない。
ここが一番の山でした。

「AIは平気で間違ったことを書く」——これは本当です。特に数字が絡むと、堂々と嘘を書きます。経営の話でそれをやられると使い物になりません。当院がここで学んだことは、AI活用の中でもいちばん応用が効く教訓だと思っています。

禁止事項を「言って聞かせる」のではなく、
間違えられない形でデータを渡す。

効かなかった方法

お願いする・注意する

  • 「前月比では語らないで」と3回書いた。3回とも守られなかった。
  • 「過去最高が出たら褒めて」と書いた。見落とす月があった。
  • 単位や桁区切りの書き方が、月によって揺れる。
  • 結論:指示の書き方をいくら工夫しても、根本的には直らない
効いた方法

構造で防ぐ

  • 前月比で語らせたくないなら、前月の数字をAIに渡さない。持っていない情報では語れません。
  • 過去最高を褒めさせたいなら、「今月これが過去最高」という確定済みのリストをこちらで作って渡す。探させない。
  • 判定はプログラム、文章化だけAI、方針は人間。役割を混ぜない。
  • それでも残る定型のミス(単位・桁区切り)は、出力を機械的に直す。
「比較できるほどデータが無い月は、比較しない」

もうひとつ入れたのがこれです。開始して数ヶ月しかないうちに「過去平均と比べて…」と書かれると、根拠のない評価になります。そこで比較対象の月が3ヶ月に満たないときは、平均を出さないというルールをプログラム側に入れました。AIに「慎重に書いて」と頼むのではなく、慎重にしか書けないデータを渡す。これが答えでした。

この考え方は、経営レポート以外の全部に効きました。AIに守らせたいルールがあるなら、指示文ではなく、渡すデータの形で決める。これはプログラミングの知識ではなく、考え方の話です。だから誰にでも真似できます。

Tone

院長の名前で出す文章に、
AIっぽさを残さない。

スタッフに向けた文章が「**重要**」や「■ポイント」といった書き方で届いたら、一瞬で「これAIが書いたな」と分かります。そうなると、書かれている中身まで軽く受け取られます。

そこで当院は、院長名義で出る文章について書き方のルールを決めました。AI特有の記号を使わない。定型のあいさつを入れない。自然な話し言葉にする。そして私が手直しした言葉は辞書に記録され、次回から反映されます。使うほど、自分の言葉に近づいていく仕組みです。

朝のスタッフルームで、数人が和やかに話している(後ろ姿・イメージ)
数字のままでは詰めているように聞こえる。言葉になって初めて、ここに届きます。image: AI (gpt-image-2)

褒めるのが目的です

コメントは「褒めベース」で作らせています。数字は詰めるためではなく、頑張ったところを見つけるために見るという方針を先に決めてあります。方針は人間が決め、AIはそれに沿って書くだけです。

前月の申し送りを引き継ぐ

先月どう伝えたかを引き継いで書くので、毎月同じ言い回しの繰り返しになりません。そして「褒めるべき点の取りこぼし」も減ります。人間がやると、ここが一番抜けます。

朝のスタッフルームで、A4のレポートを手渡しする手元(イメージ)
仕上げの言葉は院長が直して、人の手から渡します。ここだけは自動にしていません。image: AI (gpt-image-2)

数字を「見る」から、「伝える」へ。
月次共有が止まらなくなったのは、
ここが自動になったからです。

— 月次経営レポートメーカー
Security

経営の数字は、医院から出しません。

売上・担当者別の成績・評価に関わる数字は、当院でもっとも機微なデータです。だからこのシステムは、クラウドにもDropboxにも置いていません。院長のパソコンの中だけで動き、そこから外へ出る経路をそもそも作っていません。

※ 当院はAIの使い分けを最初に決めています。患者情報・給与・評価の生データは院内のAIだけで扱い、それ以外の文章づくりや開発は定額のクラウドAIを使う——という線引きです。

If you want to do the same

自院で再現するとしたら。

1
まず、レセコンから何が出せるか確認するここが最初の関門です。多くの先生は「CSVで出せる」ことを知りません。使っているレセコンのメーカーに聞けば、たいてい出せます。出せることが分かった時点で、半分終わっています。
2
「毎月、手で何をしているか」を書き出す並べ替え、前月比、名義の確認。手でやっている工程が、そのまま自動化する順番になります。いきなりAIの話にしないほうが早いです。
3
集計と文章づくりを、はっきり分ける集計はプログラム、文章はAI。ここを混ぜた瞬間に、数字が嘘になります。当院が一番失敗した場所です。
4
最後は人が読む前提で作る自動で出したものをそのまま流すと、いつか事故が起きます。「読んで直す」を工程に入れておけば、事故は起きません。直すのは1分で済みます。

「こんなことやってるよ」を、
聞かせてください。

AIで自分の仕事の道具を作っている方、いま何かを試している方。業種は問いません。使っている機材のこと、選んでいるAIのこと、うまくいかなかったこと——何を作っているか、ひとことでも添えてもらえるとうれしいです。

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医療法人 For one tooth
くりえいと歯科おおかわちクリニック 大川内秀幸
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