Deep dive 04
患者説明動画メーカー

名前を呼び、
その日やった処置を語る。
その人だけの動画を、帰り際に。

「今日は右上に仮歯を入れたので、硬いものはしばらく左で噛んでくださいね」——チェアサイドで必ず言うこの一言を、患者さんの名前入りの動画にして、QRコード1枚でお渡しします。作るのは診療の合間の短い時間。ご家族と一緒に、家で何度でも見返せます。

定番動画6本 運用中 個別生成 運用テスト中 動画1本あたりの追加費用 0円 患者名はクラウドに送らない
自宅のリビングで、年配の方と家族が1台のスマホを一緒に覗き込んでいる(手元中心・イメージ)
「で、なんて言われたの?」——この場に、私たちはいません。だから説明のほうを、ここまで持っていきます。image: AI (gpt-image-2)
Why

説明は、駐車場を出るころには
半分忘れられています。

これは患者さんが不真面目なのではありません。麻酔が効いていて、緊張していて、聞き慣れない言葉が並ぶ。その状態で聞いた話が全部残るほうが不思議です。そして家に帰ってから、いちばん大事な会話が始まります。

「で、なんて言われたの?」
——この場に、私たちはいません。

ご家族に相談して決める治療は、たくさんあります。そのとき患者さんの記憶だけを頼りに説明が再現され、そこで判断されている。私たちが丁寧に話した内容は、その場に届いていません。紙のパンフレットを渡しても、たいてい読まれません。一般論だからです。

「で、なんて言われたの?」の場面。ここに医院の説明を届けるのが、この仕組みの目的です。motion: AI video (H3, 院内GPU)
一般論の資料は読まれません。
でも自分の名前が呼ばれる動画は、
最後まで見られます。
What it feels like

患者さんが見るのは、こういうものです。

スマホでQRコードを読むと、2〜3分の短い動画が始まります。イラストとナレーション、そして字幕つき。冒頭は、こうです。

▶ あなたの治療の説明(サンプル台本)
ナレーション00:00
「◯◯さん、今日はお疲れさまでした。」
「今日は右上の奥歯に、仮歯を入れましたね。」
本編00:12
「仮歯は、最終的なかぶせ物ができるまでのあいだ、歯を守っておくためのものです。本番のものより外れやすく、欠けやすいという特徴があります。」
「ですので、硬いものは、しばらく反対側で噛むようにしてください。おせんべい、フランスパン、氷などは特に気をつけてください。」
こんなときは01:20
「もし外れてしまっても、慌てなくて大丈夫です。ご自分で戻そうとせず、外れたものは捨てずに持ってきてください。」
最後に02:05
「この動画は、ご家族と一緒に何度でもご覧いただけます。分からないことがあれば、次回いつでも聞いてくださいね。」
台本・ナレーション音声・字幕まで自動生成 — 表示はサンプルです / voice + video: 院内で合成

ここで効いているのは、技術的な派手さではありません。「自分のために作られたものだ」と伝わるかどうかです。名前が呼ばれること。今日やった処置の話が出てくること。この2つがあるだけで、見る姿勢も、言われたことの信頼度も変わります。一般向けの動画を100本並べるより、その人向けの1本のほうが強い。

The real constraint

問題は「作れるか」ではなく、
「診療中に間に合うか」でした。

患者さん専用の動画を作れること自体は、実はそんなに難しくありません。難しいのは、それを毎日の診療の流れの中でやることです。1本作るのに10分かかるなら、絶対に続きません。当院がいちばん手をかけたのは、ここです。

1
よく使う説明は、先に作っておくかぶせ物・抜歯後・仮歯・ホワイトニングなど、定番の6本はすでに完成済みです。当てはまるものがあれば、QRコードを渡すだけで終わります。ここが一番速い。
2
当てはまらないときだけ、作る院内に説明資料が16種類登録してあり、そこから台本と絵コンテをAIが自動で組み立てます。ゼロから考える工程がありません。
3
絵は使い回し、変わる部分だけ作るイラストの部品は36点以上を用意して共通で使います。毎回新しく作るのは台本と音声だけ。だから速く、そして1本あたりの費用が増えません。
4
QRコードを印刷して渡す患者さんは受け取ったQRを読むだけ。アプリのインストールも、会員登録も要りません。
受付で、小さなカードを患者さんに差し出す手元(イメージ)
渡すのはカード1枚。アプリのインストールも、会員登録も要りません。image: AI (gpt-image-2)
1本あたりの費用が増えない、というのが決定的でした。

動画の合成は、院内のパソコンだけで完結します(ナレーション音声も、映像の組み立ても)。つまり患者さん1人ごとに動画を作っても、追加費用は発生しません。1本いくら、という仕組みだったら「今日は作らなくていいか」という判断が毎回入り、結局使われなくなります。迷わずに使える価格=0円であることが、続く条件でした。

Details that matter

細かいところに、全部理由があります。

チェアサイドで「今日の説明、あとで動画でも見られますよ」と伝えて、受付でQRカードを渡す——診療の流れに足した動作は、実質これだけです。準備の重さはぜんぶ裏側(AI側)に寄せて、人の動きは変えない。それがこの仕組みを続けられている理由です。

チェアサイドでタブレットの説明動画を患者さんに見せる手元(イメージ)
その場で一度見せておくと、家での視聴率が上がります。image: AI (gpt-image-2)
診療の合間(1〜3分) お会計 ご自宅 説明内容をえらぶ 定番動画ならその場で 名前入り動画が完成 台本・絵・声もAI QRコードをお渡し カード1枚・登録不要 ご家族と、何度でも 個別動画は90日で自動削除
診療を止めずに、家庭まで届く — diagram: AI (Claude)

患者さんの名前は、外に出しません

台本づくりにはクラウドのAIを使いますが、名前を入れたあいさつ部分は院内だけで合成しています。クラウド側に患者さんの名前は渡っていません。ここは仕組みとして分けてあります。

名前の合成はローカル

個別の動画は、90日で自動的に消えます

その人のための動画を、いつまでも置いておく理由はありません。90日で自動削除。URLも推測できない形にしてあります。定番動画のほうは無期限で、印刷用のQR一覧シートも用意しています。

持ち続けない設計

声は15種類から選べます

説明する担当者を選ぶと、その人に登録した声とキャラクター画像に自動で切り替わります。「いつも担当してくれる人が話している」感じに近づけるためです。内容によって声を変える設定もしています。

担当者ごとに声を登録

誤読は、辞書に1行足して直す

「根管」「仮歯」「大川内」——AIの読み上げは、歯科用語と人名をよく間違えます。読み方辞書に1行足すだけで直り、字幕の表記は元のまま保たれます。使いながら育てていく部分です。

直すのは1行

字幕は、ナレーション全文と同期

電車の中でも、音を出せない場所でも見られます。耳の聞こえにくい方やご高齢のご家族にも届きます。「家族と見る」ことを前提にすると、字幕は必須でした。

全文字幕つき

紙の資料は、なくしていません

動画は「その人に絞った短いもの」、紙は「網羅的なもの」。役割を分けた二段構えです。動画で全部を説明しようとすると長くなり、長い動画は見られません。

動画は2〜3分

名前を呼ぶ。今日の話をする。
それだけで、同じ内容がまったく別の重さで届きます。

— 患者説明動画メーカー
If you want to do the same

自院で再現するとしたら。

最初から「患者さん専用」を目指さないでください。当院も、そこには段階を踏んで着きました。6日でv1からv20まで作り直した末の形です。

1
いちばんよく話す説明を、1つ選ぶ「抜歯後の注意」でも「仮歯の注意」でもいい。週に何回も口で言っているものが正解です。
2
それを1本だけ、動画にしてQRで渡してみるこの時点では、名前も入っていない一般向けで構いません。患者さんの反応を先に見ることのほうが大事です。
3
「作る手間」を測る1本に何分かかったか。ここが5分を超えるなら、その方法は続きません。先に速さの問題を解いてから、個別対応に進みます。
4
最後に、名前とその日の内容を差し込むここまで来ると、変えるのは冒頭のあいさつと一部の言い回しだけです。一番効くところが、実は一番あとに来ます。

「これは患者さん、喜ぶだろうな」
と思われた先生へ。

AIで自分の仕事の道具を作っている方、いま何かを試している方。業種は問いません。使っている機材のこと、選んでいるAIのこと、うまくいかなかったこと——何を作っているか、ひとことでも添えてもらえるとうれしいです。

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医療法人 For one tooth
くりえいと歯科おおかわちクリニック 大川内秀幸
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