Deep dive 08
勤怠管理システム

専用の機械は、
1台も置いていない。
数千円のカメラで、
25人の出退勤が回る。

タイムカード機、指紋認証機、受付に立てるiPadの打刻キオスク——勤怠の仕組みには、たいてい専用の機械が要ります。当院はどれも買っていません。市販の小さな見守りカメラを1台置き、あとはスタッフ全員が自分のスマホで打刻します。写真に複数人が写っていれば、その場で全員ぶんまとめて記録。追加の端末は0台です。

専用端末 0台 追加ハード費用 実質0円 市販カメラ1台(数千円) スタッフ25人で試験運用中
診療着がかかった壁のそばの棚に置かれた小さな据え置きカメラ(イメージ)
置いたのは、この小さなカメラ1台だけ。iPadも、専用の打刻機も、増やしていません。image: AI (gpt-image-2)
Why not buy one

iPadを1台増やすだけでも、
実はけっこう大変。

勤怠管理の既製品を検討したとき、最初に引っかかったのは機械そのものより「置き場所」でした。

25人のスタッフが毎日出退勤するには、受付か休憩室にキオスク端末が最低1台要ります。iPadで自作するにしても、固定する台、充電、破損・紛失対策が別途必要。そして当院の場合、院内Wi-Fiの接続台数がもう上限に近く、スタッフ全員のスマホを新たに常時つなぐ余地がありませんでした。

そこで発想を変えました。「打刻する場所」を増やすのではなく、「もう全員が持っているもの」——スマホを使う。カメラだけ1台置けば、それ以外は何も増やさなくていい、という結論です。

朝の休憩室。仕組みの全体で「置いた機械」は、この棚のカメラ1台です。motion: AI video (H3, 院内GPU)
足りなかったのは機械ではなく、
発想の向きでした。
How it actually works

写真を1枚撮ると、
写った人数ぶん、まとめて打刻。

出勤・退勤のときにやることは1つだけです。自分のスマホで打刻ページを開き、「📷撮影」を押す。すると壁のカメラが今まさに写している映像が表示され、そこに写っている人の名前を選びます。複数人が同時に出勤してくれば、1回の撮影で全員ぶんが記録できます。

出勤・昼の外出・昼の戻り・退勤——当日の打刻の回数からAIが次はどれかを予想して選んでおいてくれるので、選ぶ手間もほぼありません。カメラの前で数秒立ち止まるだけで終わります。カメラの調子が悪い日、電波が弱い日もありますが、そのときは「写真なし打刻」にそのまま切り替わり、記録自体は止まりません。

BEFORE — 専用端末を買う場合

場所の数だけ、機械が要る

  • 受付・休憩室…打刻する場所の数だけ端末が要る
  • iPad方式なら固定台・充電・破損対策が別途必要
  • 複数人が同時に来ても、1人ずつ順番に打刻
  • 場所や台数を増やすたびに追加費用
AFTER — 自作(カメラ1台+スマホ)

専用の端末を、そもそも置かない

  • 場所を1つに絞り、カメラ1台だけを置く
  • スタッフは自分のスマホを使うので追加端末ゼロ
  • 写真に写った人数ぶん、1回でまとめて打刻
  • 追加費用は実質カメラ代(数千円)のみ
タイムカード機を「買わない」という選択。

世の中の勤怠システムを否定しているわけではありません。ただ、25人という規模とうちの建物の事情には、専用端末を増やすより、この形の方が合っていました。

置いた機械はこれだけ 裏側(自動) 月ごとに 壁のカメラ 1台 市販の見守りカメラ(数千円) 全員のスマホ 写った人を選ぶだけ・複数人OK 顔の照合 15分ごとに自動・違えば院長に連絡 勤務時間の計算 着替え加算・残業・手当・15日締め A4の勤務表 1人1枚・本人確認欄つき
仕組みの全体図 — diagram: AI (Claude)
Behind the scenes

打刻の裏側で、静かに本人確認。
着替えた分は、時間に足す。

本人以外が誤って打刻してしまう事故を防ぐため、打刻の写真から「顔」を裏側で照合しています。判定を待たせては本末転倒なので、これは打刻そのものをブロックしません。15分ごとにまとめて照合が走り、様子がおかしければ院長にだけアラートが届く仕組みです。

スマホの画面に写った人の名前を選ぶ打刻画面を操作する手元、背景でスタッフが退勤していく様子(イメージ)
選ぶのは、写った人の名前だけ。カメラの前で立ち止まるのは数秒です。image: AI (gpt-image-2)

顔は、打刻写真だけで学習していく

別に観察用のカメラや監視モードを常時回す必要はありません。日々の打刻写真そのものが学習データになる設計で、使うほど精度が上がっていきます。

診療着に着替えていれば、時間に加算

「着替えは労働時間に入るのか」という、地味だけど毎日ぶつかる疑問に、写真から判定して答えを出しています。出勤・退勤それぞれ2分ずつ、自動で加算されます。

Beyond the clock

打刻から先——
残業も、手当も、
医院のルールのまま計算する。

ここが、既製のタイムカードといちばん違うところです。

「何時から何時までが所定労働で、何分過ぎたら遅刻か」「着替え分の2分は残業に乗せるのか」「無許可の早朝残業はどこから承認が要るのか」——こうした細かいルールは医院ごとに事情が違います。当院はそれを院長と何度もすり合わせながら、そのまま計算の中に組み込みました。

プリンタからA4の勤務表が出てくる瞬間の手元(イメージ)
月に一度、1人1枚のA4になって出てきます。給与計算に渡すのはこの紙だけ。image: AI (gpt-image-2)

グラフや集計だけなら、表計算ソフトでもできます。AIが効いているのは、こうした「うちだけのルール」をそのまま計算式にできること。既製ソフトの設定画面には、たいてい用意されていない項目です。

Privacy

見守りカメラだから、
見せすぎない工夫も一緒に作った。

打刻用に置いたカメラは、24時間の映像を貯め続けているわけではありません。直近の数枚だけを保存し、古い分は自動で上書きする仕組みで、ディスクの使用量が増え続けることはありません。写真そのものも60日で自動的に消えます。

勤務時間の確認・修正をする管理画面は、院内のネットワークからしか開けません。スタッフが出先から打刻できるのは、院内Wi-Fiではなく携帯回線経由。院内共通の合言葉を知っている端末だけが使えます。カメラの映像は、いつでも手元でオフにできるシャッター機能つきで、毎朝は自動でオンに戻ります。

更衣スペースのフックに掛かった診療着(イメージ)
カメラが見ているのは、打刻のその一瞬だけ。着替えの場所には、そもそもカメラを置いていません。image: AI (gpt-image-2)

専用の機械を1台買う前に、
もう全員が持っているスマホで
足りないか、を考える。

— 勤怠管理システム(自作タイムカード)
If you want to do the same

自院で再現するとしたら。

順番があります。いきなり残業計算まで作ろうとすると、まず挫折します。当院の実際の順番はこうでした。

1
「打刻の何が面倒か」を書き出す専用端末を置く手間、Wi-Fiの空きが無い、複数人が同時に来ると詰まる——うちの出発点も、不満のリストでした。
2
カメラは、今あるものから防犯用に置いていたカメラの向きを1つ変えるだけでも始められます。新しく買うにしても数千円です。
3
「うちのルール」をAIに全部話す遅刻・早退の考え方、着替えの扱い、手当の種類——医院ごとに違う細かいルールほど、具体的に伝えるほど正確に形になります。
4
1つ動いたら、そこで一度止めて使う全部を最初から作ろうとせず、まず「写真で打刻できる」だけを動かして、スタッフに数週間使ってもらう。次に直すべき場所は、現場で見つかりました。

※ この仕組みは、今もスタッフ全員に実際に使ってもらいながら、遅刻・早退や手当の細かいルールを一つずつ確認して仕上げている最中です。

「こんなことやってるよ」を、
聞かせてください。

AIで自分の仕事の道具を作っている方、いま何かを試している方。業種は問いません。使っている機材のこと、選んでいるAIのこと、うまくいかなかったこと——何を作っているか、ひとことでも添えてもらえるとうれしいです。

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医療法人 For one tooth
くりえいと歯科おおかわちクリニック 大川内秀幸
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