Deep dive 06
AImemo・AIsecretary(Slack活用)

絵文字を1つ付けるだけで、
AIが動き出す。
LINEのbotとは別物です。

当院の院内連絡は「Slack」というアプリに集めています。見た目はLINEに似たチャットアプリです。でも決定的に違うのは、その中にAIを「住人」として置いておけること。スタッフの報告に絵文字を1つ付けると、AIが読んで、改善案を出し、院長がボタンを押すと、その夜のうちにプログラムが直っています。

スタッフ全員が日常利用 AIの住人 7種類以上 起動は絵文字1個 承認はボタン1つ
白衣の胸ポケットからスマホを取り出す手元。診療の合間(イメージ)
新しいアプリを覚えてもらう必要はありません。AIは、いつもの連絡画面の中に住んでいます。image: AI (gpt-image-2)
The difference

LINEが悪いのではなく、
できることが違います。

LINEの公式アカウントにも自動応答のbotはあります。よくあるのは「1を押すと予約、2を押すと診療時間」というタイプです。あれは「決められた質問に、決められた答えを返す」仕組みで、それ自体は正しく機能しています。

当院がやっているのは、そことは目的が違います。AIを、業務が流れている場所そのものに住まわせる。スタッフの会話を横で読み、必要なときだけ口を出し、頼まれた仕事を実際にやって帰ってくる——という使い方です。これには、チャットアプリ側にいくつかの機能が要ります。

要る機能なぜ要るのか当院の使い方
話題ごとの部屋連絡・不具合報告・発注・評価を混ぜると、AIも人も読み分けられない目的ごとに部屋を分け、部屋ごとに担当AIを決めている
絵文字のリアクション「これはAIに見てほしい」を、追加の手順ゼロで伝えられる:ai: を付けた投稿だけをAIが拾う。誰が付けてもよく、後から付けてもよい
ボタン付きメッセージ院長の承認を、文章を書かずに済ませたい改善案カードの[✅採用する]を押すだけで夜間の作業が確定する
スレッド(枝分かれ)1件ごとのやりとりが、他の会話に埋もれないAIが不明点をその投稿の下だけで聞き返す
部屋に貼る文書(キャンバス)説明書は「使う場所」に無いと読まれない各部屋の上部に使い方を自動で貼り替えている
複数のAIを別人格で置く役割が違うAIを、名前と顔で見分けたいAIごとに専用のアイコンと名前を持たせている

※ 業務とプライベートのアプリが分かれる、という単純な利点も大きいです。スタッフの個人アカウントを院内連絡に使わずに済みます。

診療の合間の数十秒。白衣のポケットから出したスマホの中に、AIの職場があります。motion: AI video (H3, 院内GPU)
The killer example

スタッフの「ここ使いにくい」が、
翌朝には直っている。

これが、当院でいちばん自慢したい流れです。

普通の医院なら、こうなります。スタッフが不具合に気づく → 院長に言う → 院長が業者に電話する → 順番待ち → 「次のバージョンアップで対応します」。ここまでで、たいてい数ヶ月です。そのあいだにスタッフは諦めて、報告しなくなります。これがいちばんの損失です。

当院の実際の流れを、そのままお見せします。

スマホの画面に絵文字リアクションを付けようとする親指のクローズアップ(イメージ)
スタッフがやることは、これだけ。報告に絵文字を1つ付ける。新しい手順は増やしません。image: AI (gpt-image-2)
#バグ不具合報告(サンプル)
スタッフ15:20
在庫の画面で、発注リストを出したあと戻るボタンを押すと、最初の画面まで戻っちゃいます。もう一回探し直しになるのでちょっと手間です 😅
↳ 誰かが :ai: のリアクションを付ける(これだけがAIへの合図)
改善案AIAPP翌 7:00
【在庫管理システム】戻るボタンの挙動
発注リストから戻ったとき、直前の一覧と検索条件を保ったまま戻すよう変更します。影響範囲は在庫の画面のみ。変更前のバックアップを取ってから実施します。
採用する戻す質問する
院長23:50
(寝る前に、スマホで ✅ を押すだけ)
改善案AIAPP01:32 → 完了
修正しました。動作確認済みです。バックアップは残してあります。
状態:改善済み
スタッフ翌朝 9:02
直ってる!早い 😳
院長がやったのは、寝る前にボタンを1つ押すこと — 表示はサンプルです
昼 翌朝 寝る前 深夜 01:32 報告に :ai: を付ける スタッフの手順はこれだけ AIが改善案カード 直し方と影響範囲つき 院長が ✅ を押す スマホから・文章不要 AIが自分で直す 控えを取ってから・最小限 翌朝、スタッフの一言 →「直ってる!早い」
報告から改修まで、人が書いた文章はゼロ — diagram: AI (Claude)

ポイントは「AIが賢い」ことではありません。スタッフが余計な手順を1つも増やさずに報告できること、そして院長が文章を書かずに承認できることです。ここが重いと、どんなに優秀なAIを置いても仕組みは回りません。実際に当院は、絵文字1個で起動する形にするまでに何度も作り直しました。

安全策も、仕組みとして入れてあります。

自動でプログラムを書き換える、と聞くと不安になると思います。当院は変更前に必ず控えを取る・変更は最小限にする・確認できなければ全部元に戻す・患者さんのデータには触らないという条件を最初に固定しました。さらに、口腔内カメラのような重要なアプリはそもそも自動改修の対象から外してあります。危ないものは「人がやる」に振り分けておく、という線引きです。

Staff side

スタッフから見ると、
「24時間いる同僚」がいます。

スタッフ全員が使うAIは、いつもの連絡画面の中にいます。何かを覚えてもらう必要はありません。話しかければ答えるし、必要なときは向こうから声をかけてきます。

タスクは、担当者本人に届く

やることが決まると、AIが確認カードを出し、ボタンを押すと担当者本人にDMで届きます。そして毎日決まった時間に、まだ終わっていないものだけを催促します。休診日には送りません(祝日も自動で判定します)。

催促は毎日17:30

院内ルールを、聞きづらい相手に聞かなくていい

「この処置のときの器具、何を出すんでしたっけ」——これを人に聞くのは、新人にとってけっこう勇気が要ります。AIなら何度でも聞けます。これが実は一番効いている効果かもしれません。

出典つきで回答

重要連絡の「読んだ」を管理する

大事な連絡が全員に届いたかどうかを、AIが把握します。「言いましたよね」「聞いてません」がなくなります。

既読の見える化

定期テストの出題と採点まで

院内の知識を、AIがDMで5問出題して採点します。特に大事な項目は投稿に絵文字を付けて「必出」に指定できます。作問と採点の手間がゼロになりました。

印刷用PDFも出せる

発注は、品名か写真を投げるだけ

「これ切れました」と品名かシールの写真を送ると、AIが台帳を照会して発注リストに積みます。初めての品は名前と発注先だけで登録でき、細かい情報はあとから会話の中で溜まっていきます。

406品目を管理

「◯◯の説明資料を作って」も通る

写真を1枚貼って「ゆびしゃぶりの資料を作って」と頼むと、AIが構成を相談してきて、確定すると資料ができ、診察台の前のポータルにそのまま並びます。

作成から掲示まで自動
休憩室で2人のスタッフが1台のスマホを一緒に覗き込んでいる後ろ姿(イメージ)
特別な端末も研修も要りません。いつもの連絡画面の中に、いつの間にか「同僚」が増えている形です。image: AI (gpt-image-2)
いちばん大事な設計:AIは、基本的に黙っています。

普通の投稿には一切反応しません。絵文字を付けたときと、名前を呼んだときだけ動きます。ここを間違えると「うるさいbot」になり、1週間でスタッフから嫌われます。当院のAIは全部この方式です。賢さより、黙っていられるかどうかのほうが大事でした。

Manuals

説明書は、使う場所の真上に貼る。

どんなに良い仕組みでも、使い方が分からなければ使われません。そして「マニュアルはあの共有フォルダにあります」は、読まれないのと同じです。

そこで当院は、それぞれの部屋の上部に使い方を貼っています。発注の部屋を開けば、そこに発注のやり方が書いてある。しかもその内容は、機能を変えたときに自動で貼り替わります(元の文書を1か所直すだけで、掲示先が更新されます)。説明書が古くなって嘘をつき始める、という一番よくある事故を、これで防いでいます。

当院のルール:機能を変えたら、同じ日に説明書も直す。

コードだけ直して終わらせない。これを守らないと、半年後に「説明書に書いてある通りにやったのに動かない」が起きます。そのときスタッフが失う信頼は、機能1つの価値よりはるかに大きい。

AIを導入するのではなく、
AIが住める場所を先に用意する。
順番はこちらでした。

— 連絡ツールの中のAI
If you want to do the same

自院で再現するとしたら。

1
まず、連絡を1か所に集めるAIの話はいったん忘れてください。連絡が3つのアプリに散っている状態では、何を入れても効きません。ここを片付けるのが最初です。
2
部屋を「目的ごと」に分ける「なんでも連絡」という部屋を作らないこと。部屋の名前が、そのままAIの担当範囲になります。
3
最初のAIは「聞かれたら答えるだけ」でいい院内ルールに答えるだけのものから始めるのが安全です。いきなり自動で何かを実行させないこと。信頼が先で、権限は後です。
4
起動条件を「絵文字1個」にするここを設計できると、一気に使われ始めます。スタッフに新しい手順を覚えさせないことが、定着の条件でした。

※ 正直なところも書いておくと、Slackは人数に応じた費用がかかりますし、最初の1〜2週間はスタッフが戸惑います。当院も全員が慣れるまで時間がかかりました。ただ、慣れたあとに戻る話は一度も出ていません。

「うちの連絡もこうしたい」
と思われた先生へ。

AIで自分の仕事の道具を作っている方、いま何かを試している方。業種は問いません。使っている機材のこと、選んでいるAIのこと、うまくいかなかったこと——何を作っているか、ひとことでも添えてもらえるとうれしいです。

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医療法人 For one tooth
くりえいと歯科おおかわちクリニック 大川内秀幸
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5体のAIが雑談し、
朝は自分専用の雑誌が届く。